と、重ねてお尋ねになったので、「へい、ございます」と、又その岩を見せて上げたら、「なるほど、そうか、それならここは自天王のいらしった所に違いない」と、感心してお帰りになった、―――などと云う話をしたが、その奇妙な岩の名の由来は分らなかった。
この案内者は外にもまだいろいろの口碑を知っていた。
昔、京方の討手がこの地方へ忍び込んだとき、どうしても自天王の御座所が分らないので、山また山を捜し求めつつ、一日偶然この峡谷へやって来て、ふと渓川を見ると、川上の方から黄金が流れて来る、そこで、その黄金の流れを伝わって溯って行ったら、果して王の御殿があったと云う話。