そのときのぶなが公のお使者がみえて申されますのに、その方と仲たがいをしたというのも元はといえば朝倉のことからだ、しかしこちらはすでに越前をきりなびけ、義景をうちとってしまったから、その方にたいしなんの意趣をもいだかぬし、又そのほうもこのうえ義理をたてるところもないであろう。
しろをあけわたして立ちのくならば、えんじゃのよしみもあることだからこちらも如在には存ぜぬ、このゝち織田家のきかにぞくして忠節をぬきんでゝくれるなら、大和一国をあておこのうてもよいとおもうがと、ねんごろな御諚でござりました。
おしろの中ではよいところへ扱いがはいったと云ってよろこぶ者もあり、いや/\、これは織田どのゝほんしんではあるまい、妹御のおいちどのを助けだしておいてから、殿にお腹をめさせようと云う所存であろうと申す者もあり、評議はまち/\でござりましたが、ながまさ公は使者にたいめんあそばして、おこゝろざしのほど忝く存じますけれども、かようになりはてゝ何を花香と世にながらえましょう、たゞ討死をとげるつもりでござりますから、御前へよきなにお伝え下されと仰っしゃって、いっこうに承引なされませなんだ。