このにさんにち寄せ手は一そうはげしくせめてまいりまして、ひるもよるも合戦のたえまはござりませなんだが、けさはさすがに敵もいくらか手をゆるめたとみえまして、お城のうちもそともしんとして、大ひろまの中は水をうったようにしずかでござります。
おりふし秋もなかばのことでござりまして、おうみの国もほっこくにちかい山の上の、夜もあけきらぬほどの時こくでござりますから、まつざにひかえておりますと、肌さむいかぜがひえ/″\と身にしみ、お庭の方でくさばにすだくむしのねばかりがじい/\ときこえるのでござります。
と、ふいに広間のすみの方で、どなたか一人しく/\とすゝりなきをはじめましたら、それまでじっとこらえていらしったおおぜいの衆が、あちらでもこちらでも、いちどにしく/\と泣き出されましたので、がんぜないお子たちまでがこえをあげてお泣きになりました。