さればながい月日のうちにいつかは此のおくがたをと、ひそかにのぞみをおかけなされましたやら、なされませなんだやら、えいゆうごうけつのこゝろのうちは凡夫にはかりかねますけれども、あながちこれはわたくしの邪推ばかりでもないような気がいたします。
そう云えば万福丸どのを討ちはたすように仰せがござりましたとき、ひでよし公のとうわくなされかたは尋常でなかったと申します。
あればかりのわかぎみ一人おゆるされになりましたとて何ほどの事がござりましょうや、それより浅井どのゝみょうせきをおつがせなされ、おんをおきせになりました方がかえって天下せいひつのもとい、仁あり義あるなされかたかとぞんじますと、さま/″\におとりなしあそばされましたが、おきゝ入れがござりませなんだので、「しからばなにとぞ此のやくを余人におおせつけくださりますよう」と、いつになくさからわれましたところ、のぶなが公はなはだしく御きげんを損ぜられ、「その方こんどの功にほこってまんしんいたしたか、いらざるかんげんだてをなし、あまつさえわがいいつけをしりぞけて余人にたのめとは何ごとだ」と、きびしくおとがめなされましたものですから、しお/\と退出されまして、けっきょく若君を御せいばいなされたのだときいております。