おくがたはしょろうと申しふれられてしばらく江北におとゞまりなされまして、どなたにもたいめんあそばされず引きこもっておられましたが、おなじ月のとおかごろ、いよ/\尾州清洲のおさとかたへおかえりあそばすことになりました。
当時信長公はぎふの稲葉やまを本城になすっていらっしゃいましたので、おくがたには閑静なきよすのおしろのほうが御つごうがよかったのでござります。
もっとも途中ちくぶしまへさんけいなさりたいと云う仰せでござりましたから、お女中がたやわたくしどもゝおつきそい申しあげまして、長浜よりお船にめされました。