それに福田寺へおあずけなされた末の若君もいまはどうしていらっしゃるやら。
よいあんばいに信長公は此のお子のことを御存知なされませんでしたので、いったんはおのがれになりましたものゝ、乳のみ児のおりにおわかれなされましたきりその後の安否をおきゝにならないのでござりますから、口に出しては仰っしゃりませんでも、雨につけ風につけ、いちにちとしておあんじあそばさないときはなかったでござりましょう。
そんなことから一そうひめぎみたちを世にないものにおぼしめしまして、ふたりの若君の分までもかあいがってお上げなされました。