世のことわざに、蟻のおもいも天までとゞくと申します。
はかない盲法師でもちゅうぎは人とかわりませぬから、すこしでも御しんろうが癒えますように、せい/″\御きげんうるわしゅうおくらしなされますようにと、こゝろをこめておつかえ申し、しんぶつにきがんをかけましたせいか、いや、あながちに、そのせいばかりでもござりますまいが、そのころおくがたはおい/\にお肥えあそばされ、いちじはずいぶんやつれていらっしゃいましたのに、又いつのまにかむかしのようにみず/\しゅうおなりなされました。
おさとへおかえりになりました当座は、お肩のほねといちばんうえのあばらとのあいだに凹みが出来、それがだん/\ふかくなりまして、おくびのまわりなどひとしきりの半分ほどにおなりなされ、やせほそられるばかりでござりましたので、りょうじを仰せつかりますたびになみだにくれておりましたところ、三年目、四ねんめあたりから、うれしや日に月にわずかずつ肉がおつきなされ、七八ねん目には小谷のころよりもなまめかしゅうつや/\とおなりなされて、これが五人のお子たちをお産みあそばしたおかたとはおもえぬほどでござりました。