ましておくがたは三十路にちかくおなりあそばし、お年をめすにしたがっていよ/\御きりょうがみずぎわ立たれ、ようがんます/\おんうるわしく、つゆもしたゝるばかりのくろかみ、芙蓉のはなのおんよそおい、そのうえふくよかにお肥えなされたおからだのなよ/\としてえんなることゝ申したら、やわらかなきぬのおめしものがする/\すべりおちるようでござりまして、きめのこまかさなめらかさはお若いときよりまたひとしおでござりました。
それにしてもこれほどのおかたが早くから不縁におなりなされ、つゝむにあまる色香をかくしてあじきないひとりねのゆめをかさねていらっしゃるとは、なんということか。
しんざんの花は野のはなよりもかおりがたかいと申しますが、春はお庭にきて啼くうぐいす、あきは山の端にかたぶく月のひかりよりほかにうかゞうものゝない玉簾のおくのおすがたを、もし知るひとがありましたら、ひでよし公ならずとも煩悩のほのおをもやしたことでござりましょうに、とかくよのなかの廻りあわせはこうしたものでござります。