なれども小谷のころのことを十とせにちかい今となってもおわすれなさらず、これほどつよく根にもっておいでなされ、とりわけおん兄のぶなが公へそれまでのおにくしみをかけていらっしゃいましたとは。
夫をうばわれ子をうばわれた母御のうらみはなるほどこういうものだったかと、わたくしそれをはじめて知りまして、もったいなさとおそろしさとにそのあとしばらくからだのふるえが止まなかったくらいでござります。
まだこのほかにもきよすにいらしった時分のことはおもいでばなしがかず/\ござりますけれども、あまりくだ/\しゅうござりますからこれほどにいたしておきまして、それよりのぶなが公のふりょの御さいごをきっかけに、このおくがたがふたゝび御えんぐみあそばすようになりました始終を申し上げましょう。