それで侍をはだか馬にのせて御城下へふれあるかせ、「さわぐな/\」と取りしずめて廻られましても、まちかたの者はいまにもあけちが攻めて来ると申して泣くやらわめくやらのうろたえ方でござります。
右兵衛だいふどのも最初は安土にろうじょうのかくごでおられましたけれども、こゝではこゝろもとないとおもわれましたか、また急に模様がえになりまして、御台やお局さまがたを早々におつれ申し上げて御自分の居城日野谷へたちのかれました。
それが三日の卯の刻だそうで、五日には早や日向守があづちへまいりなんなくおしろを乗っとりまして、けっこうなお道具類やきんぎんのたからがそのまゝになっておりましたのをこと/″\く己れのものになし、家来たちにもわけあたえたと申すうわさでござりました。