なにゝいたせ北畠どのは三七どのと腹ちがいの御きょうだいでいらっしゃいまして、どちらも御れんしであらせられながらおもしろからぬおん間柄でござりましたから、一方がかついえ公の肩をもたれましたにつけ、一方がひでよし公のしりおしをなされたのでもござりましょう。
もとよりふかく立ち入ったことはしかと申しあげかねますけれども、お女中がたがより/\にひそ/\ばなしをなされますのを、わたくし小耳にはさみまして、さてはひでよし公、小谷のときよりれんぼなされていらしったのだ、あの時そうとにらんだことはやっぱり邪推ではなかったわいと、ひそかにおもいあたりましたことでござります。
それにしても十年以来、たえずせんぐんばんばのあいだを往来あそばし、あしたに一塁をぬきゆうべに一城をほふられるおはたらきをなされながら、そのおいそがしいさなかにあってなおおくがたのおんおもかげを慕いつゞけていらしったのでござりましょうか。