まして夜中にあわたゞしい御しゅったつでござりましたから、なんの花やかなこともなく、中にはまた、ひでよし公のぐんぜいが途中でおくがたをいけどりに来るなどゝ、あらぬうわさにまどわされておさわぎになるお女中がたもおられました。
のみならず道中のなんじゅうなことゝ申したら、おりあしくいぶきおろしがはげしく吹きつけ、すゝむにしたがってさむさがきびしく、木の本柳ヶ瀬あたりよりみぞれまじりのあめさえふってまいりけんそな山路に人馬のいきもこおるばかりでござりまして、ひめぎみたちや上﨟がたのおこゝろぼそさはさぞかしとさっせられました。
わたくしなども旅にはわけて不自由な身でござりますからつらさはひとしおでござりましたが、しかしそんなことよりは、このさむぞらに山また山をおこえなされて見もしらぬ国へおいであそばすおくがたのさき/″\をおあんじ申し上げ、なにとぞ御夫婦仲がおんむつまじくまいりますように、このたびこそは幾久敷お家もさかえ、共白髪のすえまでもおそいとげなされますようにと、たゞそればかりをおいのり申しておりました。