おりから四重のおへやではこしもとしゅうが死にしょうぞくをあそばされいっせいにねんぶつをとなえていらっしゃいまして、どなたもきがついたかたはござりませなんだので、それをさいわいにこゝかしこの枯れくさの山へ火をつけてまわり、障子、ふすまのきらいなくもえがらを投げちらしまして、われからけぶりにむせびながら、「火事でござります、火事でござります」とさけびごえをあげました。
くさがじゅうぶんにかわきゝっておりましたところへ、五重の窓がすっかりあいておりましたことゝて風が下より筒ぬけに吹きあげまして、ぱち/\とものゝ干割れるおとがすさまじく、逃げ場にまよわれるお女中がたのうなりごえと悲鳴とがびゅう/\という火炎のいぶきといっしょにきこえ出しましたが、「やゝ、とのさまのお座所があやういぞ」「御用心めされい、うらぎりものがおりまする」とけぶりの下よりくち/″\に呼ばわってあまたのにんずが駈けあがって来られました。
それからさきは、朝露軒どのゝ一味とそれを防がれるかた/″\とがほのおの中に入りみだれ、たがいにあらそってせまいはしごを五重へのぼろうとなさるらしく、そのこんざつにもまれましてあちらへこづかれこちらへこづかれいたしますうちに、熱いかぜがさあっとよえんを吹きかけてはまたさあっと吹きかけてまいり、しだいにいきが出来ないようになりましたので、おなじ死ぬならおくがたと一つほのおに焼かれたいと、しょうねつじごくのくるしみの底にもひっしにおもいきわめまして、はしごへ手をかけたときでござりました。