「弥市、このお方を下へおつれ申せ」と、どなたかはぞんじませぬけれども、そう仰っしゃっていきなりわたくしの肩の上へ上臈さまをおのせになりました。
「おひいさま、おひいさま、おふくろさまはどうあそばしました」と、とっさにわたくしはそう申しましたが、それというのはそのとき背中へおんぶいたしましたのはお茶々どのだということがすぐにわかったからでござります。
「おひいさま、おひいさま」と、つゞけてお呼び申しましても、お茶々どのはうずまくけぶりに気をうしなっていらっしゃいまして、なんとも御へんじがござりませなんだが、それにしてもいまのお侍は、なぜ御自分がひめぎみをおたすけ申さずに、めくらのわたくしへおあずけなされましたことか。