「おひいさま、おひいさま、おふくろさまはどうあそばしました」と、とっさにわたくしはそう申しましたが、それというのはそのとき背中へおんぶいたしましたのはお茶々どのだということがすぐにわかったからでござります。
「おひいさま、おひいさま」と、つゞけてお呼び申しましても、お茶々どのはうずまくけぶりに気をうしなっていらっしゃいまして、なんとも御へんじがござりませなんだが、それにしてもいまのお侍は、なぜ御自分がひめぎみをおたすけ申さずに、めくらのわたくしへおあずけなされましたことか。
おおかたそのお侍は忠義一途にとのさまのおあとをしたい、此処を御じぶんの死に場所とさだめておられたのでござりましょうか。