「あれは天守がおちたんですね」と、だれにきくともなく申しましたら、「そうだ、空に火ばしらが立っている、きっと玉ぐすりに火がついたのだ」と、そばをはしっている人がそう申されるのです。
「おくがたやほかのひめぎみたちはどうあそばしたでござりましょう」とたずねますと、「ひめぎみたちはみんな御無事だが、おくがたは惜しいことをしてしまった」と申されるではござりませんか。
くわしいわけはあとで知れたのでござりますけれども、その人とならんではしりながらだん/\話をきゝますと、朝露軒どのはまっさきに五重へ上って行かれましたところ文荷さいどのがたちまちたくみを見ぬかれまして、「裏ぎり者、何しに来た」というまもあらせず斬ってすてられ、はしごのてっぺんからけおとされたと申します。