もとよりこれも自分が悪事をしでかした罰でござりまして、たれをうらむべきすじもないのでござりますが、いったん死におくれましてはいまさらお跡をしとうたところでおくがたにあわせる顔もござりませぬから、諸人のつまはじきを受けながら生き耻じをさらしておりますうちに、もみりょうじも、琴のおあいても、余人に仰せつけられまして、もうわたくしにはとんと御用がないようになってしまいました。
ひめぎみたちはその時分安土のおしろに引きとられていらっしゃいまして、ひでよし公のおことばがござりましたばかりにいや/\ながらわたくしを召しつかっておられましたので、それを知りましてはむりにお慈悲にすがりますこともこゝろぐるしく、もはや辛抱もいたしかねまして、或る日、こっそりと、おいとまごいの御あいさつもいたさずに逃げるようにおしろをぬけて、どこと申すあてもなくさすらい出たのでござります。
さあ、それがわたくしの三十二のとしでござりました。