もとの武田どのゝおくがたが松の丸どのと申されていらっしゃいましたから、そのおかたのおとりなしもござりましたろうけれども、何よりも淀のおんかたにつながる御えんがあったればこそではござりませぬか。
いちどは小谷どのゝお袖にすがられ、つぎにはそのお子さまのなさけにたよられ、二度までもあやういゝのちをたすけておもらいなされながら、あの大雪のなかを落ちていらしった当時のことをおわすれなされ、だいじのせとぎわにむほんをなされて大坂ぜいのあしなみをみだされるとは。
あゝ、あゝ、しかし、いまさらそんなことを申したところで仕方がござりませぬ。