いちどは小谷どのゝお袖にすがられ、つぎにはそのお子さまのなさけにたよられ、二度までもあやういゝのちをたすけておもらいなされながら、あの大雪のなかを落ちていらしった当時のことをおわすれなされ、だいじのせとぎわにむほんをなされて大坂ぜいのあしなみをみだされるとは。
あゝ、あゝ、しかし、いまさらそんなことを申したところで仕方がござりませぬ。
かぞえたてればくやしいことやうらめしいことはいくらでもござりますけれども、さいしょうどのも、いちのかみどのも、もはやあの世へおいでなされ、権現さまさえ御他界あそばされましたこんにちとなりましては、なにごともすぎにしころの夢でござります。