そして法師丸は、今夜も亦彼女の眼元と口元に浮かぶ不思議な微笑を見たのであった。
左の端にいる女から、きれいに血の痕をぬぐい取った一つの首が廻って来ると、此の女はそれを受け取って、先ず鋏で髻の元結を剪り、ついで愛撫する如く髪を丹念に梳って、或る場合には油を塗ってやり、或る場合には月代を剃ってやり、或る場合には経机から香炉を取って煙の上に髪の毛を翳してやり、それから右の手に新しい元結を持ち、その一方の端を口に咬え、左手で髪を束ね上げて、恰も女髪結がするように髻を結んでやるのである。
彼女はその仕事を無心で勤めているらしいのだが、結い上げた首の髪かたちを点検するが如く死人の面上へ眼をそゝぐときに、必ずあの謎のような笑いが頬に上った。