今迄の彼は、自分が心の主であり、心の働きはどうでも思い通りに支配することが出来たのだが、その心の奥底に、全く自分の意力の及ばない別な構造の深い/\井戸のようなものがあって、それが俄かに蓋を開けたのである。
彼はその井戸の縁へ手をかけ、まっくらな中を覗いてみて、測り知られぬ深さに怯えた。
自分は達者な人間だと信じていた男が、思いがけぬ悪性の病気があることを発見したのと同じような気持だった。
今迄の彼は、自分が心の主であり、心の働きはどうでも思い通りに支配することが出来たのだが、その心の奥底に、全く自分の意力の及ばない別な構造の深い/\井戸のようなものがあって、それが俄かに蓋を開けたのである。
彼はその井戸の縁へ手をかけ、まっくらな中を覗いてみて、測り知られぬ深さに怯えた。
自分は達者な人間だと信じていた男が、思いがけぬ悪性の病気があることを発見したのと同じような気持だった。