彼がこう云う不思議な希望と計畫とを胸に育てゝいる一方、寄手と味方とは本丸と二の丸の境目のところで毎日血みどろな攻防戦を続けつゝあった。
勝ち誇った薬師寺の兵が、もはや城の陥落も一と息と見て、石垣を乗り越え、木戸を打ち破り、とき/″\本丸の中へ真っ黒な塊になって雪崩れ込むのを、味方は必死に喰い止めて、どっと二の丸の方へ押し返し、突き崩し、虐殺と、怒号と、砲声と、叫喚と、物のメリメリ破壊され、蹈みにじられる音と、人間の集団の彼方へ動き此方へ動く地響きとが、一日じゅう大雷雨のようにがーんと耳の端で鳴っていた。
実際、さしも堅固を以て聞えた牡鹿城も、もう此れ以上持ちこたえることが覚束ない形勢であった。