それに、まんべんなく照り渡っている月は下界をすべて銀色に反射させ、透き徹った秋の夜の空気の耳にある物が、どんな微細なものまでも皆キラキラと眩ゆい燐光を発しているので、その極端な明るさが見張りの者の展望を妨げているのである。
少年は、或る所では火を囲んでうずくまっている番兵の傍を通り抜けたり、或る所では望楼の真下の方へ、地上に帯の如く倒れているその影を利用して近寄って行ったりしたけれども、誰も見咎める者はなかった。
籠城方がもう本丸まで追い詰められた際であるから、恐らく物見の兵共も油断して寝ていたのであろう。