此の年頃の武士ならば、大概日に焼けた頑丈な肌をして、何処かに戦場往来の俤を留めているものだのに、その寝顔の皮膚は、浅黒いながらも鏡板を拭き込んだようで、透かして見ると鳥の子紙のように肌理が細かい。
こう云う皮膚は、雨に曝され風に打たれつゝ馬背に日を暮らす武人のものでなく、深窓に育って詩歌管絃の楽しみより外に知らない貴人のものである。
そう云えば薬師寺弾正と云う男は、管領畠山氏の家人ではあるが、その父の代から主人畠山氏を凌ぐ勢いがあり、時には陪臣の身を以て室町将軍の意志をさえ左右する権力者であった。