そんな場合に、事件の火元は自分であることを教えてやればどんなに皆が助かるか知れないものを、叱られるのが恐かったり、今更云い出しにくかったりして、誰も気が付かないのをいゝ事に、何処迄も知らん顔で済ましてしまう。
法師丸もまあそれに似た心持だった。
敵の様子が変ったのは自分が昨夜此れ/\のことをしたからだと名告って出れば、味方は俄かに生色を取り返し、無駄な心配から救われる訳でもあり、第一法師丸自身がいかに面目を施すことか、少年の身を以てそんな働きをしたことが知れたら、父輝国や一閑斎はどんなに褒めてくれるであろうか、それを思うと、云い出したくてむず/\するようにもなるのだが、彼の手柄は実に偶然の儲け物で、裏面に潜んでいる耻ずかしい動機が露顕することを考えたら、とても恐ろしくなるのであった。