それに證拠も證人もなしでは、名のり出たとしても誰が信じてくれるだろうか、昨夜本丸へ逃げ帰った際に、すぐにでも届け出れば信じて貰えたであろうけれども、彼は寝床へもぐり込む前に血の附いた衣類などを悉く大篝り火の中へ投げ込んで、むしろ證拠を堙滅するのに骨を折った。
今ある唯一の證拠としては、そっと紙に包んで懐に入れている鼻があるが、それを持ち出したら彼の大事な秘密がバレルのは云う迄もない。
そんなことよりも法師丸は、昨夜あれ迄順調に運びながら、最後の瀬戸際で折角の計畫が齟齬したのが残念でならなかった。