たゞ問題となるのは、かの法師丸の時代に女首の刺戟が与えた不思議な快感、奇怪な幻想、「秘密な楽園を趁ふ心」は、そのゝち輝勝の脳裡に於いて如何なる形態を取っていたであろうか?
初陣の時の花々しい働きを見れば、此の十六歳の若武者の胸中には最早やそんな汚らわしい記憶はあとかたもなく消え去って、燃ゆるが如き覇気と野心とが充ち満ちていたように思われる。
実際、幼い時に彼が味わったようなあの不思議な快感は、恐らく誰もが少年の折に一度や二度は経験することのあるものなので、彼のみが知っている秘密ではないのであるが、それがその人の心に喰い入って一生の性生活を支配する程の病的傾向となるのは、たま/\その人がそれに誂え向きな四囲の状況の中に置かれて、繰り返し/\その感情を呼び覚まされる結果である。