彼に取っては、桔梗の方の透きとおるばかりな青白い頬が鼻を缺かれた夫則重の様子を偲びつゝ洩らすであろうなまめかしいほゝえみは、屋根うらの女のそれよりも遥かに魅力の強いものだった。
なぜなら、あの時の少女は井田駿河守と云う者の娘に過ぎないのに、これは菊亭中納言の血を引いた、生れながらに貴い姫君である。
そうして駿河守の娘の場合は、たま/\無意識に浮かべた微笑が対照的に残忍な色を帯びたに止まるけれども、此の上﨟の品のよい頬にのぼるものは、深くもたくまれた、此のうえもない冷嘲をふくむ笑いである。
彼に取っては、桔梗の方の透きとおるばかりな青白い頬が鼻を缺かれた夫則重の様子を偲びつゝ洩らすであろうなまめかしいほゝえみは、屋根うらの女のそれよりも遥かに魅力の強いものだった。
なぜなら、あの時の少女は井田駿河守と云う者の娘に過ぎないのに、これは菊亭中納言の血を引いた、生れながらに貴い姫君である。
そうして駿河守の娘の場合は、たま/\無意識に浮かべた微笑が対照的に残忍な色を帯びたに止まるけれども、此の上﨟の品のよい頬にのぼるものは、深くもたくまれた、此のうえもない冷嘲をふくむ笑いである。