かくてそれから又二た月ばかり過ぎた仲秋の頃であったが、或る日、その番所詰めの役目が、此の間からそれを心待ちにしていた河内介へ運よく廻って来たのである。
尤もそう云えば彼こそ秘密を嗅ぎつけている唯一の人物であるから、彼を措いて他に適任者はない訳だけれども、彼がその日を待ちに待ったのは、勿論陰謀の證拠を抑えて則重に忠勤を抽んでようと云う腹からではない。
番所と云っても桔梗の方の起き臥しゝている居室からは遥かに隔たっているので、垣間見ることは愚か、間接に連絡をつける望みも覚束ないが、しかし餘所ながらその人を慕う身になってみれば、ちょっとでも彼女に近い所へ行って、彼女の住んでいる御殿の甍、壁の色なりとも眼に入れたかったのである。