此処に持って居りまするお形見の品は、その節その男の懐に這入っていたのでござります」
今は僅かに一二尺の距離を隔てゝ差し向いになっている河内介は、話しているうちに夫人の長い睫毛の先に幾粒かの露の玉が結ばれて、それがはら/\と蝋のような頬を伝わって来るのを見た。
その傷ましくも美しい人の有様を前にしつゝ、次第に彼は智慮と弁舌とを十分に働かせる落ち着きを取り返していた。
此処に持って居りまするお形見の品は、その節その男の懐に這入っていたのでござります」
今は僅かに一二尺の距離を隔てゝ差し向いになっている河内介は、話しているうちに夫人の長い睫毛の先に幾粒かの露の玉が結ばれて、それがはら/\と蝋のような頬を伝わって来るのを見た。
その傷ましくも美しい人の有様を前にしつゝ、次第に彼は智慮と弁舌とを十分に働かせる落ち着きを取り返していた。