無残な横死をした父がせめて西方浄土にでも生れることか、大事な忘れものをしたゝめに今も此の世に未練を残して浮かばれずにいるかと思うと、―――殺された上にも尚そんな目に遭わされている気の毒な父を考えると、―――立っても居てもいられなかった。
彼女は毎夜、父の亡霊が顔のまん中をおさえながら夢枕に現れて、「鼻が欲しい、―――鼻を返してくれ」と云い続ける声を聞いた。
結局彼女は、何とかして父のために鼻を捜し出してやり、あの恐ろしい死顔の記憶を脳裡から一掃してしまわないことには、一と晩も安眠が出来ないのであった。