尤も前々から、女中どもを相手に内輪でそう云う催しをしていたのであったが、それを今度は、表座敷の書院の間へ侍共を招いて、やゝ盛大に開こうと云うのである。
これは桔梗の方の発案であって、織部正も和歌にかけては昨今大いに天狗になりかけている矢先ではあり、殊に夫人の慫慂でもあるから、一も二もなくその議に同意した。
老臣共も、催し物に事を缺いて和歌の競詠大会では、勝手が違い過ぎて近頃迷惑な次第だけれども、まあそんなことがきっかけで殿様の御気分が明るい方へ向ってくれゝば何よりであるからと、取り敢えず上意の趣を諸侍へ申し伝え、「心得のある者」は身分の高下を問わず出席を差許す旨を一統へ触れた。