河内介父の城に帰る事、並びに池鯉鮒家の息女と祝言の事
これより先河内介の父武蔵守輝国は、すでに老齢に達して体の工合が思わしくなく、朝夕薬餌に親しむようになったので、自分の息のあるうちに河内介に然るべく嫁を迎えて家督を譲ろうと思う心が切であった。
それで一日も早く自分の居城多聞山へ忰を呼び戻したく、たび/\そのことを筑摩家へ願い出たのであったが、兎角国中に穏かならぬ謡言が専らである折柄、殊に先年月形城の謀叛以来牡鹿山の老臣共は猜疑の念が深くなって、容易に願いを聴き届けようともしなかった。
河内介父の城に帰る事、並びに池鯉鮒家の息女と祝言の事
これより先河内介の父武蔵守輝国は、すでに老齢に達して体の工合が思わしくなく、朝夕薬餌に親しむようになったので、自分の息のあるうちに河内介に然るべく嫁を迎えて家督を譲ろうと思う心が切であった。
それで一日も早く自分の居城多聞山へ忰を呼び戻したく、たび/\そのことを筑摩家へ願い出たのであったが、兎角国中に穏かならぬ謡言が専らである折柄、殊に先年月形城の謀叛以来牡鹿山の老臣共は猜疑の念が深くなって、容易に願いを聴き届けようともしなかった。