此の時河内介に取っては、父の膝下へ戻る嬉しさもさることながら、桔梗の方との別離の悲しみも当分は癒し難い痛手であった。
必要の前には直ちに本来の武士の魂に立ち返る彼ではあるが、しかし鉄石のような意志にも初恋の味は格別である。
況んやその人のためにはあらゆる背徳と忘恩の罪を犯してまで熱情を傾け盡したのに、逢う瀬を楽しめる時が来てから幾程もなく仲を割かれてしまうのである。
此の時河内介に取っては、父の膝下へ戻る嬉しさもさることながら、桔梗の方との別離の悲しみも当分は癒し難い痛手であった。
必要の前には直ちに本来の武士の魂に立ち返る彼ではあるが、しかし鉄石のような意志にも初恋の味は格別である。
況んやその人のためにはあらゆる背徳と忘恩の罪を犯してまで熱情を傾け盡したのに、逢う瀬を楽しめる時が来てから幾程もなく仲を割かれてしまうのである。