夫の頭を支配していたものは遠く牡鹿山の奥御殿に於ける情景であって、父の云い付けで餘儀なく娶った新妻に対しては、自分より七つ歳下の、一人の利発な、罪のない少女として傍観するより以上の気持になれなかったのである。
まだしも彼は、その新妻が多く情事を解しない歳頃であるのを結句仕合わせとしたのであった。
が、輿入れしてから一二箇月過ぎた或る夏のゆうぐれのこと、松雪院が腰元たちと縁先で涼を納れていると、そこへ河内介がふらりと這入って来て、
夫の頭を支配していたものは遠く牡鹿山の奥御殿に於ける情景であって、父の云い付けで餘儀なく娶った新妻に対しては、自分より七つ歳下の、一人の利発な、罪のない少女として傍観するより以上の気持になれなかったのである。
まだしも彼は、その新妻が多く情事を解しない歳頃であるのを結句仕合わせとしたのであった。
が、輿入れしてから一二箇月過ぎた或る夏のゆうぐれのこと、松雪院が腰元たちと縁先で涼を納れていると、そこへ河内介がふらりと這入って来て、