河内介は、松雪院の寝床をその穴のある所、即ち道阿弥の首の位置から畳三四畳を隔てゝ敷かせ、それから又一畳ばかり離れたあたりに自分の床を敷かせた。
夏のことであるから、此の大名の若夫婦の寝床の上には、それにふさわしいうすものゝ蚊帳が吊ってあった。
そして道阿弥の首の両側に燈火が置かれ、そのうしろに屏風が囲ってあったので、蚊帳の中からは首のある場所が明るくはっきり見えたけれども、道阿弥の方からは、暗い所にふわ/\している蚊帳の外側がぼんやり分ったくらいな程度で、中にいる夫婦の様子などはまるきり見えなかったであろう。