尤もわたし、あの人の事については何も主人にいいませなんだ。
「夫に過去のあやまち隠しとくのんよろしゅうないから、――殊に肉体上の関係なかったのんなら告白しやすい訳やから、すべてを打ち明けておしまいなさい」と先生はいうて下さいましたけど、……けどどうも、……それはまあ、主人にしましてもあるいはうすうす気イついてたかも分れしませんのですが、私の口からは何やいいにくうもありましたし、この後間違いないように自分さい注意してたらええのや思いまして、何事も胸に収めてたのんです。
ですから主人は私が先生からどんなお話伺うて来ましたやら、それは知りませんでしたけど、いろいろ為めになること教せてもろたに違いない思て、そういう心がけになったのんはええ傾向やいうてましてん。