ただ何やしらん頭の中にY子さん以外の或る人の印象刻みついてて、Y子さんを眼の前に見ながら、知らず識らずその印象の方モデルに使てた、――使うつもりものうて、自然と筆がその人の姿写してた、いうだけやのんです。
もう先生にはお分りになっておられますやろが、その、わたしが無意識のうちにモデルにしてた人いうのんが、――どうせ新聞にも出ましたのんですから、いうてしまいますが、――徳光光子さんやのんです。
(作者註、柿内未亡人はその異常なる経験の後にも割に窶れた痕がなく、服装も態度も一年前と同様に派手できらびやかに、未亡人というよりは令嬢の如くに見える典型的な関西式の若奥様である。