ですから光子さんの方では私の顔知りなされしませなんだか、知ってなさっても別に気イに留めておられなんだのんですやろ。
私の方にしましてもそれほど光子さんに注意してたとは思われしませんのですが、でも何とのう好きそうな人やいう風に考えてたに違いないのんです。
それもしかし、ものいうたことないくらいですよって、性質やとか気だてやとか、そんなこと分れしませんでしてんけど、――まあ、何とのう、ただ全体の感じやのんですなあ、そういえば私が案外早うから光子さんに気イつけてました証拠には、もうその時分に誰から聞いたいうでもなしに、光子さんの名前やお所を、――船場の方にお店のある羅紗問屋のお嬢様で、住まいは阪急の蘆屋川にあるのやいうようなことまでちゃんと知ってましてん。