わたしの方では疾うから綺麗な人や思て、噂立ちません時分には、光子さんが通りなさると、それとのう傍い寄って行ったりしましてんけど、光子さんの方ではてんと私やかい眼中にないような塩梅で、すうッと通ってしまいはりますが、その通られた跡の空気までが綺麗なような気イするのんです。
もしも光子さんが例の噂聞いてなさるとしたら、なんぼ何でも私いうもんに注意しなされへん訳あれしませんやろ。
イヤな奴っちゃ思われるか、気の毒や思いなさるか、何とか素振に見えそうなもんですのんに、さっぱりそういう風しなされへんもんですから、私の方も段々ずうずうしいになりまして、また傍い寄って顔のぞき込むようになりましてん。