そないなって来ると、無理に奈良い行く必要もないようになりましたが、ちょうど四月の終りのことで、えらいええお天気の日曜でしたさかい、電話かけて相談して、上六の終点で待ち合いして、お午すぎから若草山の方ぶらぶら歩き廻りました。
光子さんは歳のわりにたいそうおませなとこもありますし、また子供のような無邪気なとこもあって、山の頂辺い上りましたら、蜜柑五つも六つも買うて、「ちょっと見てて御覧」と、それを上から転こばしたりしました。
すると蜜柑は頂辺から下までころころと転こんで、その拍子にぽんと一つ往来飛び越えて、向い側の家の中い這入るのんで、面白がっていつまででもそないしてなさるのんです。