――はあ、その場所ですか、あれはあのう、若草山の山が三つ重なってる、その一番前の山と、その次の山との間のへっこんだ所、――あそこら辺いったいに、ずっともう一杯に生えてまして、あの山のんは、毎年春に山焼きしますのんで特別おいしいのんです。
――そんなことでもう空大分暗なった時分、二人ともまた前の山の方い戻って来まして、あんまりくたぶれましたよって、山の中途へんい腰おろして休みながら、暫くぼんやりしてます時でした。
「柿内さん」と、急に光子さんが何やこうすこし改まった様子で、「わたしどうしてもあんたにお礼いわんならんことあるねんけど」いわれるのんです。