「もしもしどなた様ですか」いいますと、「姉ちゃん、あて――あてや」いうのんが、光子さんより外にそんないいようする人はないのんですけど、それが電話が遠いのんか、小声でいうてるのんか、聴き取れんぐらいかすかやのんで、何や誰ぞにわるさでもしられてるような気イして、「あんた誰ですねん?
はっきり名前いうて頂戴、何番い電話かけなさったん?
と念押しますと、「あてやわ、姉ちゃん、あて西宮の一二三四番へかけてんねんわ」と家の電話番号をいう声が、聞いてるとやっぱり紛れものう光子さんで、「……あてなあ、今大阪の南の方にいるねんけど、えらい目に遭うてしもて、……着物盗まれてしもてん。