光子さんが急用やいやはるさかい」とたったそれだけいうて、二階い上って大急ぎで箪笥の中から揃いの着物や何やかんやと、夫が余所行きの時着る絹セルの単衣と羽織と絞りの三尺とを出して、風呂敷に包んで、それ女子衆に持たして先いそッと玄関まで出さしましたが、「なんやいな今時分からそんな包持って?
と、さすがに夫は気になったらしゅう、自動車い乗ろとする時に奥から出て来ていうのんでした。
多分私の様子が慌ててもいましたし、顔色も変ってたですやろし、不断着のまま髪も直さんと出て行ことするのんが、よっぽどけったいやったのんに違いないのんで、「なんやうちにもさっぱり様子分れへんねんけど、今夜急にこの揃いの着物なあ、――」と、私は知って風呂敷の結び目から着物の端出して見せて、「――これどないしても着んならんことが出来たんで、大阪の店まで届けてほしいうてやんねえ。