這入ってみますと三畳ぐらいな次の間やのんで、二十七、八の色の白い男の人がたった一人畏まってすわってまして、「失礼ですが、光子さんの友達の奥さんですか」いいますよって、「そうです」いいますと、急にしゃちこ張ってぺたッと畳い頭擦りつけて、「今夜の事は何と申し上げたらよいか、お詫びのしようもないのんです。
いずれこの事につきましては光子さんから申訳せんなりませんのんですが、何とも合わす顔ないいうておられますし、それに着物ありませんのんで、まことに申しかねますけどもとにかく着換え貸してもろて、その上でお目にかかりますよっていうのんです。
その男いうのんが、いかにも光子さんの好きそうな輪郭の整うた女のような綺麗な人で、眉毛のうすいのんと眼の細いのんがこすそうな感じ与えますけど、私かって見た瞬間に「美男子やなあ」思たぐらいな顔だちで、この人も着物ないはずやのんに縞銘仙の単衣を着てキチンとしてましたのんは、あとで聞きましたのんですが宿の男衆の着物を一時借ってましたんやそうです。