「着換えは此処い持って来ました」いうて風呂敷包渡しますと、「大きに済みませんことです」と押し戴くようにして受け取って、部屋の隅の方の境の襖あけて奥の座敷い包押し込むと、急いでまたそこ締めてしもたのんで、ちらッと枕屏風が見えただけでしたけど。
その晩のことそんなふうに一々委しいにいいましたらえらい長うになりますのんですが、私はその場合届けるもんは届けてしもたし、それに男がいるのんやったら会うてもしょうがない思て、お金三十円紙に包んで、「先イ帰りますよってこれ光子さんに上げて下さい」いうたのんですが、「まあ何卒そないおいいにならんで待ってて下さい、今に出て来られますから」いうて、無理にその男が引き留めるのんです。
そうして改まって私の前いすわり直しながら、「実はこの事は、ほんまは光子さんから申さんならんのんですが、僕は僕の立ち場として説明せんならん思いますのんで、一往聞いて下さいませんか」いうて、――つまり光子さんは自分でやといいにくいもんですよって、着物着換えてる間にその男が代って話するように、段取りがきまってたらしいのんです。