その時どんな顔してなさるか見てやりたい思たんですが、ちらッと視線打つかると慌てて俯向いて、男の蔭に寄り添うように音もささんとすわってしまいなさったんで、脹れ上った眼瞼と、長い睫毛と、高く通った鼻筋と、噛みしめてなさる下唇とが見えるだけで、両手をこういう風にこう、――八つ口のところい突っ込んで、体をねじらして、前のはだけたのも直さんと身イ投げ出したようにしてなさるんです。
そんで私は光子さんのそうしてなさる姿眺めてるうちに、ああこの着物が揃いの着物やってんなあ思うにつけても、それを拵えた時分のことや、その着物着て一緒に写真撮ったりした事が考え出されて、またジリジリ腹立って来て、ええ、こんなもん、拵えんといたらよかった、いっそ飛び着いてずたずたに引き裂いてやろか知らんと、――ほんまに男がいエへんかったら、それぐらいなことしたかも分れしませんねん。
男はその様子感づいたらしいて、二人がなんにもいわん先に「さあさあ」と追い立てるようにして、自分も着物着換えるやら、私からお金を受け取って宿屋の方では「いりまへん」いうのん無理に勘定済ますやら、「あ、そういうと奥様、まことに恐れ入りますけど、今のうちに奥様のお宅と光子さんのお宅とい電話かけといて下さいますと、なお都合よろしいですがなあ」いうたりして、ちょっとも隙与えんようにするのんでした。