男はその様子感づいたらしいて、二人がなんにもいわん先に「さあさあ」と追い立てるようにして、自分も着物着換えるやら、私からお金を受け取って宿屋の方では「いりまへん」いうのん無理に勘定済ますやら、「あ、そういうと奥様、まことに恐れ入りますけど、今のうちに奥様のお宅と光子さんのお宅とい電話かけといて下さいますと、なお都合よろしいですがなあ」いうたりして、ちょっとも隙与えんようにするのんでした。
私は私で家の方が心配でしたよって、「うち今直ッきに光子さん送ったげて帰るけどなあ、光子さんとこから別に何ともいうて来やはれへんかったか?
と女子衆呼び出して聞いて見ますと、「はあ、さっき電話がおましたんで、どない申し上げてええのんか分れしまへなんだよって、何時頃とも申し上げんと、ただお二人さんで大阪い行っておいでですいうときました」いうんです。