私に預けるいうときながら、あんた帰ってくれはれへんねんやったら私帰ります」いうてやろか知らん思たんですが、お梅どんの方は「それがよろしおまんなあ」「そうしまよなあ」と何でも彼でも綿貫のいうことに調子合わして、「そんならお気の毒ですけど、阪急のとこまで送って戴けまッしゃろか」と、知って男の思う壺に嵌まって行くのんです。
考えてみるとお梅どんかってやっぱり光子さんや綿貫とぐるになってたん違いないのんで、やがて橋のとこで車降りて土手の下の真っ暗な路いかかりましたら、「なあ奥様、こんな闇夜に男の人いててくれはれしまへなんだら、恐うて歩かれしまへんなあ」と、用もないのんに私掴まえて、こないだこの路で何処其処のとうちゃんがこんな目エに遭いはったいうような話休みなしにしかけて、なるだけあとの二人より離れて歩くようにするのんです。
二人は五、六間うしろの方からまだ何や知らん相談しながら来るらしいて、「ふん」とか「はあ」とかいう光子さんの声がかすかに聞えてるのんでした。