二人は五、六間うしろの方からまだ何や知らん相談しながら来るらしいて、「ふん」とか「はあ」とかいう光子さんの声がかすかに聞えてるのんでした。
停留所の前で男が帰ってしまいますと、また三人は黙り込んで、あそこから俥で光子さんの家まで行きました。
「まあ、まあ、ほんまに、何でこないにおそおましてん」いいながらお母様が出て来なさって、「いつもいつもお邪魔に上りまして御厄介になりますばっかりで」と、えらい私に気の毒がっていろいろお礼いいなさるのんですが、こっちは私も光子さんもけったいな顔してますのんで、長いことしゃべってたらぼろ出る思て、自動車呼びましょういうてくれはりますのんを「いいえ、俥待たしてあります」と逃げるように出て来まして、また阪急で夙川まで後戻りして、あそこからタクシーで香櫨園まで帰って来ましたら、ちょうど十二時になってました。